ドグラ・マグラのキチガイ地獄外道祭文が読んでて楽しい

ドグラ・マグラ夢野久作の長編小説で、構想十年執筆十年という大傑作だ。この本は小説の枠組みにとらわれず論文、演説、詩、歌、映画、漢文などで物語が構成されていて、あまりに奇妙なもんだから日本三大奇書の一つに数えられている。本記事のタイトルの、なんとも禍々しく文字列「キチガイ地獄外道祭文」は、この本の歌の部分だ。この歌は精神医学の専門家・正木博士が精神病と精神病院の実態を暴き、博士の新しい最先端の精神病院を建設する金を集めるために日本全国各地で歌ったものだ。なんとなく話がつかめたところで、二度か三度下の文章音読してほしい。これは歌の最初の部分から引用したものである。

▼あ――ア。外道祭文キチガイ地獄。さても地獄をどこぞと問えば。娑婆シャバというのがここいらあたりじゃ。ここで作った吾が身の因果が。やがて迎えに来るクル、クルリと。眼玉まわして乗る火の車じゃ。めぐりメグって落ち行く先だよ。修羅や畜生、餓鬼道越えて。ドンと落ちたが地獄の姿じゃ。針の山から血の池地獄大寒地獄に焦熱地獄剣樹ケンジュ地獄や石斫イシキリ地獄。火煩カボン、熱湯、倒懸 サカヅリ地獄と。数をつくした八万地獄じゃ。娑婆で作った因果のムクいで。切られ、砕かれ、アブられ、煮られ。阿鼻アビや叫喚七転八倒。死ぬに死なれぬ無限の責め苦じゃ。もしもその声、聞いたら最後じゃ。頭張り裂けクタバルなんぞと。高いトコから和尚オショウの談義じゃ。……スカラカ、チャカポコチャカポコチャカポコチャカポコチャカポコ……

 

まず真っ先に句読点が不自然なこと、次に文体が普通に喋るのとなにか違うことが分かるだろう。そして音読を終えるころにはあるリズムに気づいたはずだ。「言葉が七音ごとに切れるようになっている!」七音、七音、ああまた七音。次のその次も。なかなかイメージできない方は西村俊彦さんの音読動画を聞いてみるといい。該当箇所は5:16:21あたりだ。

 

youtu.be

西村俊彦さんの朗読は歌とマッチして、とてもリズミカルで中毒性が高い。歌は動画で1時間20分くらい、文庫本で30ページ(だったはず)はあるのだが、僕はもう150回以上

聴いてるし半分くらい空で歌えるようになってきた。何遍も聞いてると自分でも七七調の文章を作文してみたい気持ちになってきた。「話にならない」とか「未来が見えない」とか、会話の中で出てくる言葉が七音だと気持ちい感じになる。

 

七七調について調べていくとこのサイトを見つけた。

ナナナナ|俳句でも短歌でもない七七を投稿しよう

確かにこれは心地よい。でも、コレジャナイ感..

キチガイ地獄外道祭文は全体が長い文章のようで、まとまり・軸がある。一方こっちは短く、短歌のお尻14音を切り取ったようにしか見えず、キチガイ地獄外道祭文と違う。

 

もっと七七調の文章が読みたい。もし誰かいい文章を知っているなら、コメント欄に貼ってほしい。